超突貫工事

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今回は増改築現場での事例です。

 台所の改装とキッチンを取り換える一般的な増改築工事です。
大工さんと現場で打ち合わせを行い、必要な材料の手配を済ませ工期は一週間かかる事と工事の予定を施主様に説明をおこないました。
 まず問題無く引き渡しは出来るであろうと思っていた所、洗面所と浴室の改装の追加をしたいと申し入れがあり、すぐさま設計と営業へ連絡して図面と見積りを作成して追加工事の準備を行いました。

 追加工事契約の際に営業には最低でもプラス一週間の工期の追加をお願いしておきました。(合計二週間の工期が必要)
 ところが追加工事契約書の工期を見てびっくり! 工期は前のままの一週間になっているではありませんか。「これくらいの工事なら大丈夫でしょう。」と営業の言い訳!

 現場の施工を何も知らない営業マンは時としてこのような無謀とも言える工事を現場に押し付けるのです(T_T)
 このような工期の無い工事がお客様にどれだけ負担をかけ、施工の精度を落とすかぜんぜん解っていません。(ましてや増改築は施主様が生活しているのです。)

 お風呂がユニットバスならここまでは言いませんが、左官仕上げの在来浴槽のため。コンクリートが固まらないと次には進めません。しかも今は真冬なのでなかなか固まりません。しかし契約した以上は工期をまもらなくてはならないのです。
 温風ヒーターで乾かしながらの工事、あまりやりたくはないのですが工期に間に合わせる為に仕方がありません。
 通常の半分の工期ですから毎日夜の12時近くまでの工事。施主様はもちろんご近所にもかなりの迷惑をかけてしまっています。
 お引き渡しの前日、あと浴室の塗装仕上げが済めば工事は終了です。なんとかここまでたどり着きました。しかし浴室の壁のモルタルがなかなか乾きません。

 十分に乾かしてから塗装しなければ、塗装が剥がれやすくなってしまいます。
そこで温風ヒーターで乾かしながら十分に乾くまで待つことにしました。
 待っている間に塗装業者さんから「時間が無いから言いませんでしたが、このような狭い空間でシンナー系の塗装を使うのは、引火の危険も大きいし何より塗装する自分たちがシンナー中毒で倒れてしまいますよ。」と言われました。
 仕様書を確認すると確かにシンナー系の塗料が指定されており設計に確認すると、その方が水に強いと思い使いました。と返答がありました。

 塗装業者は水性塗料でも水に強い塗料もあるので、事前の相談があれば。と言っていましたが、今回はそんな余裕はありませんでした。
 夜中の12時を過ぎてようやく塗装が出来るくらいに乾燥しましたのでさっそく工事に取り掛かりました。
 塗装工事は5分施工して3分休みで行うようにして、職人のシンナー中毒を防ぐように進めました。
 あと少しで終わる所までたどり着きましたが、5分過ぎても出てきません。声をかけると「もう終わりますから終わらせてからでます。」 との返事!

 しかし、出てきません。声をかけても返事がありません。
 すぐさま浴室に飛び込むと浴槽の中で職人がヘラヘラ笑っています。持ち上げようとしましたが、体がだら~としていて持ち上がりません。

 一旦外に出ると大きな深呼吸を10回くらいして浴室に戻り渾身の力を込めて職人を一気に持ち上げると、家の外へと運び出しました。
 こちらも思いっきりシンナーを吸いこんでしまいましたので、足元がグルグル回り頭痛と吐き気でその場に倒れ込みました。
 やがて職人さんは何もなかったかのように起き上がり、「残りを終わらせるから少し待ってよ。」と言って中に入って行きました。
 仕事も無事に終わり、帰りにラーメンを食べようと言ってラーメン屋にいきました。職人さんは「仕事の後のラーメンはうまい」と美味しそうに食べていましたが、こちらは気分が悪くて味も何もわかりませんでした。

 無理な工期は大きな事故にもつながりかねません。工事担当者の意見も聞いて無理のない工期を選ぶ方がずっと良い家が出来ると思います!

この記事の著者

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河野 誠

河野住宅クリニック 代表

公認ホームインスペクター(住宅診断士)
2級建築士
宅地建物取引主任者
福祉住環境コーディネーター
住宅ローンアドバイザー
2級電磁波測定士

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